近年、楽器系雑誌に度々登場する無類の機材マニアギタリスト“魚頭 圭”。
ビンテージ機材から果てはハンダ、ピックに至るまで拘り抜かれたサウンドメイキング。
そんな彼も今までは“何と無く”弦を選んでいたのだが、今回DRを通じ、ついに“弦”の領域に足を踏み入れる。
今回、魚頭さんに下北沢ガードアイランドスタジオにてインタビューを行いました。
機材マニアが語る“弦”とは何か? その拘りを是非、一緒にお楽しみください。




[所謂、“知りたがり”(笑)]

キクタニミュージック(以下K) 突然ですが、何故ビンテージ機材にハマッたのですか?



魚頭圭(以下U) 一番最初は中学でベースを買いまして。アクティブの。
当時はアクティブとパッシブの違いもわからなくて、チューナーを繋いだまま寝ちゃって、

次の日弾こうとしたら音が出ないって言うね。(笑)


本当に最初は右も左も判らなかったですよ。
そこから時を経て、19歳のときにアメリカにツアーに行った時、向こうでマーシャルの800を弾いたんですよね。
で、滅茶苦茶サウンドが良くて。なんでこんなに違うんだろうと。
60,50Hzの違いとかはそこから大分先に知る事になるのですが。
で、日本に帰ってきてたまたま、吉祥寺にあったビンテージギターズという楽器屋で高野順さんにお会いしたのが大きかったですね。
20歳の若造に丁寧に色々な事教えて頂けました。
まあ、僕もかなりしつこく質問しましたけど。

所謂、“知りたがり”(笑)

そこからFシュガーの佐藤さんだったり、元グヤトーンの鈴木さんだったりと様々な出会いの機会に恵まれました。

で、凝りもせず、出会う度に質問攻め。(笑) そうやって、人脈も知識もついてきたって感じですね。






“諦めずに直ぐに動くことが大事”

K:それでバイアス調整やらビンテージチューブやらまで?


U:昔はe-bayとかでビンテージのギターアンプとか結構買えたんですよ。
昔の機材ってかなり真空管に負荷をかけてドライブしたりするので、いつも、調整にF-シュガーに持ち込んでいたんですね。
あまりにも頻度が多くてそのうち佐藤さんが

“もう面倒だから簡単な調整は教えてやるから自分でやれ”って(笑) 
本気で面倒くさがられていましたから。(笑)

K:でも、結局、可愛がられていたって事ですよね?


U:自分もこの年になると面倒くさい位の後輩の方が可愛いいと思えるようになりました。(笑)



K:良い楽器屋、否、良い人との付き合い方ですよね。


U:勿論、今まで一杯、失敗もしました。他店でビンテージギターを買って、リペアに持ち込んだら、もう調整できない位の物を掴まされたりして。



K:失敗は成功の元じゃないですか。最初のアクティブピックアップで躓いたからこそ、今がある(笑)


U:そこで、諦めずに直ぐに動くことが大事ですよね。




“戻りが早い分、サウンドをコントロールし易いし結果、演奏し易い。”



K:それで、今回DRを試してもらう事になるのですが。
最初に使っていた弦って何ですか?


U:最初の頃はA社のヘビーゲージを使っていましたね。
でも、錆びやすかったり、チューニングの安定度もあまりよく無かったりで。
それで先輩に相談したらG社のヘビーゲージを薦められて。
確か、昔のフェンダーとかの仕様書にも52とか56の弦が書いてあるんですよ。
錆びにくくなったし、音も良くなったしOKぐらいでずっとそれを使用していました。

それで、今回、DRを薦められて、

最初に驚いたのが、テンションにブレが無いですよね。 それから、弦の振動幅が非常にタイトだから、サウンドのレスポンスもよりダイレクトになります。 これは生音でも違いが判りますね。どの弦もしっかり鳴ってくれるんですよ。

巻き弦は良いんだけど、プレーン弦がね?見たいなのも無いです。

何回かの演奏後のチューニングの安定度も高いですね。チョーキングも綺麗に決まるし。

弦って、張った後にどれだけ安定してくれるかが大事だと思っています。 倍音感とかも含めて。一回使ったらコンプレッションが効いちゃう弦もあるんですよ。 DRは全然そんな事無く、超安定してくれます。

今日の弦は張って2週間ぐらい経っているんですけど、和音も濁らないし、まだまだ全然問題ない!



K:それってDRのコンプレッションワウンドの成せる妙だと思いますよ!!


U:なるほどね。最初はその分、テンションがキツメかなと思ったんですけど、

戻りが早い分、サウンドをコントロールし易いし結果、演奏し易い。



K:BINSON,ビンテージアンプ、ビンテージギター、果てはハンダ、ピックまで拘ってきた男がついに弦にまでですね(笑)


U:拘り過ぎると本当に果てが無いから、在る所で線引きはするんですけどね。 僕は研究者では無いですから(笑) 


K:それでも是非、今後も拘り続けてください! 今日はありがとうございました!


U:ありがとうございました!!



機材紹介





弦:DR TITE-FITE BT-10(10-52)
ギター:68年GIBSON FIREBIRD

アンプ:64年MARSHALL JTM45(240V仕様) (昇圧持込)
キャビネット:SELMER
スピーカー:77年celestion G-12 H30

ディスクエコー:60年 ECHOREC BABY

エフェクト&スイッチャー:S氏作成ハンドメイド

ピック:本鼈甲ピック ※3種類の音の違いを聞かせて頂いたが、本鼈甲、明らかに音の立ち上がりが素晴らしい。

魚頭圭 プロフィール

90年代から日本ハードコア/エモシーンで活動するギタリスト。国内ハードコアの伝説的バンド、There Is A Light That Never Goes Outを経て、2013年に解散した3人組ロックバンドZでもコンポーザー/ギタリストとして活躍。元bluebeard高橋良和率いるAS MEIASにもギタリストとして参加。 無類の機材マニアとしても知られており、ギター本体のみならず、アンプ、エフェクター、真空管、コンデンサ、配線材、ハンダに至るまでこだわり抜き、自身が求める理想のサウンドを探求。2014年にはAS MEIASで一緒に活動していたベースの羽田剛とBALLOONSなどで活躍している藤本大輔とともにOSRUMを結成。ギター・サウンドにさらに磨きをかけ、1st アルバム「OSRUM」をリリース。