メジャーシーンでレコーディング、ライブ、最近では教則本を出版と華々しく活躍する
プロベーシスト“川崎哲平”。
多くのプロミュージシャンを顧客に抱える、日本屈指のプロショップ
“池部楽器店ベースコレクション”の店長 岡崎健司。

そんな、お二人に“プロが選ぶ弦とは?”というお題で大いに語って頂きました。
気心知れた二人だからこそ終始リラックスした雰囲気でスタート。
今回は、その模様をお伝え致します。




“寝起きに“俺、ベースやろう”って思って”

キクタニ(以下K):そういえば川崎さんの出身って?



川崎哲平さん(以下T):福岡の凄く田舎町っていうか村ですね。でも、音楽するには凄く良い環境でした。 友達の家に集まって、ドラムとかアンプも鳴らせました。



K:アメリカみたいですね(笑)


T :中三でギターを始めて、最初は90年代のJ-ロックをコピーばかりしていましたね。 その後はパープルとかもしましたけど。


K:ベースじゃなくて!?


T: 高校3年の夏のある日、寝起きに“俺、ベースやろう”って思って。そこからはずっとベースです(笑)友達がYAMAHAのビリーシーンモデルを譲ってくれて。それからは、Mr. BIGとかのコピーばかりしていましたね。


K:3本指も?


T:慣れれば意外と簡単ですよ。



K&O:いやいや(笑)


T:その後、福岡の専門学校に入って。当時は速く弾くことばかりに重きを置いていて(笑)それで何故か先生に成らないかと誘われ、演奏の仕事と先生を福岡でしていました。 そこから段々と譜面仕事も来る様になってきて。 学校でJAZZとかの授業は飛ばしていたから結構苦労して。 速さ命だったから(笑) ベースプレイヤーとして知識は必要だと思い直し、先生仲間に一からまた教えて頂いたりして。そこから、ウッドベースも始めて。
K:岡崎さんは?



岡崎健司さん(以下O):僕も実は中学から20代前半まではギターを弾いてまして、10代の頃は同じくメタラー(笑)。 その後、JBやスライ等のファンクにハマって、ファンク系のバンドをやっていたんですが、なんとキーボード不在で、その分もギターでカバーしようとしていたんですが、楽器的に限界を感じて、その時あきらかにベースのほうがオイシイということに気付きました(笑)。それから徐々に深みにハマっていったというところでしょうか。

僕が池部楽器店に入社した当時(`99年)の旧渋谷店は、地下の1フロアの中にギター/ベースからアンプ、小物、シンセやDTMまで、それこそドラムとDJ以外のLM楽器は何でも扱う量販店でした。当時は今と違ってハイエンドのギターもベースも渋谷ではGuitars Station のみで販売していたんですが、ちょうどこの頃ベースだけ渋谷店に移されることになりまして。僕はもともとギターフロアの配属でしたが、FoderaやSmith、Sadowsky等の素晴らしい楽器に触れるうちにすっかりベースに魅了されてしまい、その後自ら希望してベース担当になり・・今に至ります(笑)。





“やっぱり人間性とかも重要ですよね。”

K:川崎さんは何がきっかけで所謂、メジャーの世界に?



T:25歳まで福岡に居て、やっぱり東京に行かなきゃ始まらないと思い、あてもなく勢いで東京に出てきました。そこからご縁で、最初は安部潤さんのボウヤになって。


K:また1から下積み?



T:そうですね。その1年でスタジオワークとか様々なベーシストにお会い出来て、それは本当に沢山の経験をさせて貰いました。 その間もデモテープは安部さんに渡していて丁度、丸一年くらい経ったある日、 プリプロで一回ベース弾いてみるってなって。 で、“あ、上手いじゃんって”(笑)  そこからですね。本番にどんどん投入して頂けるようになって。 それでやっぱり人間性とかも重要ですよね。仕事に呼んで貰えるかどうかって。


K:目を見て挨拶できるとか?



T:そうそう。本当に基本的な事ですけど。


K:そこから今やSadowskyのシグネチャーモデルを出すまでに! 実際、ベース本体はどんなサウンドですか?


T:あまり高域が出過ぎず、ボトムがしっかりしたベースですね。 そこの辺りも弦で補うことが出来ます。





“やっぱり“どーん”とサウンドを出したい派なので。”

K:弦を選ぶときのポイントは?


T:まずは音色。それから手触り、寿命、死に方、ピッチ、テンション感ですね。



K:やはり色々な弦を試しました?


T:勿論です。やっぱり中々、全部を兼ね備えてくれる弦っていうのは無いですよ。 寿命は長いけど、音色は今一とか。 HI-BEAMSを選んだ理由は先の条件は殆どクリアしていて。 ステンレスだから多少のざらつきはあるけど、かなり少ない方ですよね。



K:巻きをタイトにしている賜物ですよね。プレイヤビリティが高い。


T:そうですね。他社の弦だと、どうしてもざらつきが強かった。 レコーディングの仕事をしているとその感触のせいで、タイムがずれたりすることがあって。 それでもステンレスを選んでいるのはニッケルに比べてワイドレンジ。 やっぱり“どーん”とサウンドを出したい派なので。 勿論、ニッケルのニュアンスのつけ易さとかも良いですけどね。 ミッドが出るので、ベースを歌わせたい時はニッケルの方が良いかもしれないですね。



K:最終的にはサウンドは機材でも調整できますけど、無い周波数を調整は出来ないし、手触りは弦でしか変えられないですよね。


T:その通りですね。体感してみないと判らない物ですよね。








“楽しむ為に色々とチャレンジする。”

K:岡崎さんにとって弦選びのポイントとは?


O:ベースの場合、弦のチョイスとセットアップの重要度はかなり高いと思います。
大げさかもしれませんが、この二つによって演奏性だけでなく楽器そのものの良し悪しさえも違って感じられることがよくありますからね。

楽器本体にも様々なタイプがありますから、それぞれの特性を考慮して相性の良い弦を選ぶ必要があります。やはり難しいのは、それ以外に弾き方や音の好み、感じ方の違いなど、人それぞれありますので、最終的には感覚的な判断になるということでしょうか。

それから、ベースの場合は物理的な”長さ”の問題もありますね。特殊なスケールの楽器やブリッジの構造によっては、実効部分の長さが短過ぎたり長過ぎたりして正しく張れないなんてこともありますからね。これは実際に店頭でもよくご相談をいただきます。

ネットやカタログ上のスペックだけではなかなか伝わらない部分もありますので、ぜひお店でご相談いただいて、実際に2-3種類の弦を試してみていただいた上でご自身のベストなものを見つけていただくのが、やはり一番の近道になるかと思います。


K:そんな岡崎さんがDRを薦める時はどんな時ですか?


O:僕の場合は、ヴィテージよりはモダンなスタイルの楽器にDRをお薦めすることが多いのですが、HI-BEAMSがセットされた哲平さんのプレベを弾かせていただいた時は目から鱗でしたね。

品番についていえば、アクティヴベースをお使いの方やロック系の方にはまずLO-RIDERからお薦めしています。 もっと柔らかめでスラップのし易さとか、楽器のテンションがきつめの場合にはHI-BEAMSでしょうか。そこから更にボトムに張り感が欲しい場合はFAT-BEAMS、もっとウォームな感じが欲しいと思えばSUNBEAMSとか。

しなやかさを求める方にもSUNBEAMSはお勧めです。 ニッケルなのにしなやか。ニッケルでラウンドコアって意外と他社には無い設定ですよね。アルダーのジャズベやフレットレスなんかに良いかもしれません。


T:ベース・ソムリエ?



O:(笑)そんな大層なものじゃないですが、弦交換、セットアップに関しては、店頭の楽器からプロのベーシストまで、日常的に行っていることですので、そういった経験値を基にアドバイスさせていただけるかと思います。ご自身の楽器のことや好みなどをお教えいただければある程度候補を絞れると思いますよ。


T:確かにネットの情報を鵜呑みにし過ぎる人は最近、多いですね。
やっぱり触って、実際に音を聞くというのが一番大事だとは思いますね。
判るようになると、より楽しくなるし。



O:何でもそうだと思いますが、楽しみながら色々なことにチャレンジしたり、深く掘り下げていくというのは凄く良いことですよね。


K:良いですね。お二人とも職人の拘り!! ちなみに、これからプロベーシストを目指すユーザーにアドバイスがあれば、お願いします。


T:今の若い方々って、本当に演奏が上手いと思います。 でもプロになれるかどうかって“ニーズ”があるかどうかだと思います。 上手いからやり過ぎちゃう。 ベースはベースっていう人が求められると思いますね。 あとはやっぱりガッツですね。そして拘りと貪欲さ。



K:今日はお忙しい中、ありがとうございました!


O&T:ありがとうございました!



川崎 哲平 プロフィール

1980年福岡生まれ。 フリーのベーシストとしてレコーディング、ツアー、ライブサポート、セッション、TV収録、CM録音などで活動。 上戸彩・槇原敬之・華原朋美・阿部真央・DIMENSIONなどのライブサポートメンバー、およびレコーディングを中心に活動。 2008年にはマクドナルド「プレミアム・ローストコーヒー」のCMにT-SQUAREの伊東たけしと共に出演した。 ポップスからインストゥルメンタル、JAZZまで幅の広いプレイが持ち味。 エレキベースとコントラバスの両刀使いでもある。 レコーディング参加アーティスト ・嵐 ・ 杏里 ・ いきものがかり ・KAT-TUN ・ 倖田來未 ・ 島谷ひとみ ・SMAP ・ 田村ゆかり ・ タッキー&翼 ・テゴマス ・トータス松本 ・一青窈 ・ 槇原敬之 ・ 松田聖子 ・渡辺美里など

オフィシャルWEBサイト http://teppeikawasaki.com/


岡崎 健司 プロフィール

今や多くのプロミュージシャンを顧客に抱える日本屈指のベースショップ “池部楽器店ベースコレクション”の店長。 店頭の商品はもとより同店で販売した楽器は自らセットアップ、メンテナンスを行っており、高級ベースを専門に扱うショップながら常にプレイヤー目線に立ち、弦やエフェクター等の周辺機器を含め、日々至高のベースサウンドを追求し続けている。

池部楽器店ベースコレクション
WEBサイト

http://www.e-basscollection.com