コージー村上スペシャルレポート「ARTI&MESTIERI / Furio Chirico’s THE TRIP -LAST LIVE IN JAPAN 2026-」
Furio Chirico(フリオ・キリコ) [ARTI&MESTIERI / Furio Chirico’s THE TRIP]:当日使用、UFiP Bionic Series シンバルサウンド・レポート
(文:ドラムアドバイザー コージー村上)

2026年4月24日と25日に、 川崎クラブチッタで開催された、“ザ・ベスト・オブ・イタリアン・ロック最終章 ARTI&MESTIERI / Furio Chirico’s THE TRIP -LAST LIVE IN JAPAN 2026-”にご招待いただき、観に行って参りました。
生けるイタリアン・プログレのレジェンド・ドラマー“Furio Chirico(フリオ・キリコ)”氏、74歳。2バンドともプレイし幕間が45分間あったとは言っても、トータルで3時間。相当に体力、精神力を消耗するはずですが、疲れも年齢も感じさせない素晴らしいプレイを観せてくれました。
このレポートは、UFiPシンバルのサウンドを中心に、2バンドのライブの演奏感とフリオ・キリコ氏のプレイの感想を述べて参ります。

まず会場入りしてステージで目を引くのは、フリオ・キリコ氏が愛用する“UFiP Bionic Series(ユーヒップ・バイオニックシリーズ)”クラッシュシンバルの光沢ある輝きを放つ姿。その日に使用されていた“TAMA Starclassic Bubinga(タマ・スタークラシック・ブビンガ)”の落ち着いたカラーリングと対をなす、これから鳴り響くぞと言わんばかりの輝き。さらに、オープンハンド奏法のフリオ・キリコ氏のため、ドラマーから向かって左側に、チャイナ / ライド / ハイハット / クラッシュというシンバル類が集中し、右側はタムやフロアタムを使ったフレーズに対応するためのクラッシュが2枚という変則的なセットアップ。そのプレイを観たくなる気持ちを十分に引き上げてくれます。

1バンド目の “Furio Chirico’s THE TRIP(フリオ・キリコズ ザ・トリップ)”。ハードながらもプログレの要素を散りばめた一曲目から全ての観客を魅了し、1時間後の最後の曲終わりでは、アドレナリンが上がってきたオーディエンス達の拍手と歓声によるアンコールが。
4人(ドラムス、ギター、ベース [+ヴォーカル]、キーボード)のシンプルな編成ながらも各楽器を埋めるほどの音圧が十分にあり、プログレッシブなハードロックを想起させる楽曲群の中でも、バイオニックシリーズ・シンバルのクリアな音抜けと伸びのある響きが存在し、シンバルサウンドが埋もれがちなホール系の会場であっても、バンドメンバーやオーディエンスの耳にしっかりと届いていました。
さらに、キーボードやオルガンの静かなロングトーンの和音から始まり、段々と各楽器が入ってきてクレッシェンドで盛り上げていくプログレ特有の荘厳な楽曲でも、フリオ・キリコ氏の繊細なフレーズからダイナミックなフレーズまで自在に操るプレイを、バイオニックシリーズ・シンバル達の幅広い表現力がサポート。

元々バイオニックシリーズは、ロックやメタル系のサウンドに合うよう製造されていましたが、2013年のマイナーチェンジ以降は「しっかりした基音と豊かな鳴り」を同時に獲得したいと考える、多様な音楽性を巧みにシームレスにプレイしたいドラマーに最適なサウンドにブラッシュアップ。フリオ・キリコ氏の様な、ジャズからロックまでといった幅広い表現力を持つプレイを全て受け入れられる、懐の深さを持ったシンバル・シリーズに進化していることが納得できるサウンドでした。

2バンド目の“ARTI&MESTIERI(アルティ・エ・メスティエリ)”は、幕開けの一音からその世界に引き込まれる程のさすがのレジェンド・プログレバンド。多人数編成(ドラム、キーボード x2、ギター、ベース、ヴォーカル、バイオリン、サックス)を増減させ組み換えながら、それぞれの楽曲に適したメンバーで演奏。グランドピアノとフレットレスベースのデュオ、プログレジャズ感満載の小編成プレイ、ジャズフュージョン的なバイオリン・サックス・ギターのユニゾンフレーズを聴かせる曲、キーボードやオルガンの空間を支配するイントロから始まる荘厳な組曲等々、本当に幅広い楽曲が用意されたセットリスト。
その中で、繊細なフレーズからフォルテッシモの強いショットまで、圧倒的で幅広い表現力を持つフリオ・キリコ氏のプレイを、バイオニックシリーズ・シンバル達が余裕を持って受け止める。
シンバルロールにおいて、繊細なプレイからダイナミックなプレイまで、クリアな倍音を保ちつつ表現幅の広さを持つ“Crash(クラッシュ)”。
“Heavy Ride(ヘヴィライド)”は、抜けの良いベル音や粒立ちあるピング音を出しながら、ジャズ的な楽曲では伸びやかなクラッシュ音も出せる力量。
“HiHat(ハイハット)”は、クローズ時のハッキリとした粒立ちはもちろん、クローズからオープンへのナチュラルな移り変わりとサスティンが秀逸。スネアドラムのクローズド・リムショットとの相性やバランスの良さもあり、ドラマーや楽曲に対する幅広い対応力を誇示。
そして、“Power China(パワーチャイナ)”は、タイトな芯がありながらクラッシュのように華やかに鳴り響き、特にスネアドラムと同時にショットした際の相性が良く、バンドの中でもしかりとキレ良く抜けてきていました。

楽曲や楽器が求める、音量、音圧、音質、音数を、自身の縦横無尽と言っても過言ではないプレイで余すとこなく表現するフリオ・キリコ氏。
楽器は音楽を奏でるための手段であることが十分に納得でき、前評判で観て聞いていた通りの、唯一無二な“オープンハンドで、右手がレギュラーグリップ”奏法による自由自在なプレイはもちろん、激しいメタルバンドよりも多く踏んでいるのではないかと思う程のツインペダル・ワーク、フィジカルの限界と思わせる力強いショットから、プログレジャズと言われる所以であるピアノトリオほどに繊細なフレーズのコントロールやフィーリングの表現まで、その全てが楽曲の表現に通じる、本当に素晴らしいドラマーでした。
そのフリオ・キリコ氏のプレイの表現幅を余裕を持って受け止め、最大限に引き出しながらオーディエンスに確実にその音を届ける、“UFiP Bionic Series(ユーヒップ・バイオニックシリーズ)”シンバル達。その力量を目の当たりにでき、ドラマーやミュージシャンにご紹介する際の新たな知識をたくさん得られた、非常に有意義な時間となりました。
<フリオ・キリコ / 当日使用シンバル>

【UFiP / Bionic Series】
通常のキャスト製法に比べてベル部分を厚くすることが可能で、ボウからエッジ部分をより滑らかに薄く仕上げることができる、ユーヒップ独自の“Roto Casting(ロトキャスティング)”製法によるパワフルで芯があるクリアな鳴りが特徴。
それに加え、レスポンスの速さや幅広いダイナミクス、スティックで叩いた瞬間のフィーリングといったプレイアビリティを得るため、大き目で深めに施されたハンマリングと、細かいバフで若干表面を整え磨き上げられた光沢ある美しいゴールデン・フィニッシュを施し、楽曲を包み込むような豊かでふくよかな深みのある響きを獲得。
「しっかりした基音と豊かな鳴り」を同時に獲得したいと考える、ジャズ / フュージョン / ポップス / プログレ / ロック / メタルといった音楽性を、巧みにシームレスにプレイしたいドラマーに最適な優れたコントロール性能を持つ、様々なジャンルにお使いいただけるシンバルシリーズとなっています。

【Left Side】BI-20HR (Bionic Series / Heavy Ride 20″)
・ヘヴィライド
バイオニックシリーズ特有の、パワフルで芯のあるクリアなサウンドを保ちながら、繊細なピング音を確保するために、表面は敢えて磨き上げた光沢感を出さずに仕上げ、表情豊かなレガート音を可能にしています。より厚めに仕上げられた、存在感を放ちながら必ず抜けてくるベルサウンドも秀逸です。
【Right Side】BI-19 (Bionic Series / Crash 19″)
【Right Side】BI-18 (Bionic Series / Crash 18″)
【Left Side】BI-17 (Bionic Series / Crash 17″)
・クラッシュ
ユーヒップ独自の製法のベル部分によるクリアなアタックと、ボウからエッジ部分を滑らかに薄く仕上げたことによるふくよかな鳴りを両立したクラッシュ。強く叩いた時のパワフルさはもちろん、優しく叩いた時の繊細なレスポンスも秀逸で、幅広い音楽性に対応可能です。
【Left Side】BI-13HH (Bionic Series / HiHat 13″)
・ハイハット
表面は敢えて磨き上げた光沢感を出さずに仕上げ、繊細なプレイからパワフルなプレイまでシームレスに表現可能な、キレ良く楽曲になじむ粒立ちを演出。オープン/クローズの際の、サスティンのクリアさとナチュラルな移り変わりも魅力です。
【Left Side】FX-18PCH (FX Series / Power China 18″)
・FXパワーチャイナ
タイトな芯がありながら、強打しなくてもクラッシュのように華やかに鳴り響くチャイナ・シンバル。特徴的な円柱形のベルが、チャイナらしいトラッシーな響きと抜群の音切れを演出しています。
※Bionic Seriesと同製法です。
セッティング図

コージー村上プロフィール
COZY MURAKAMI
約30年にわたり楽器販売の現場でドラム専門スタッフとして活躍。豊富な製品知識と経験を活かし、多くのドラマーや楽器メーカーから信頼を集めてきた。
プレイヤーとしても精力的に活動し、メジャーレーベルよりソロアルバム『SOUL BOUND -Dedicated to Cozy Powell-』(2004年)をリリース。ライブやレコーディングなど幅広いフィールドでドラマーとしてのキャリアを築く。
また、ドラマー向けにシンバルの基礎知識や選び方を解説したDVD『究極シンバルガイド』では監修・出演を務めるなど、ドラムおよびシンバルに関する啓蒙活動にも携わる。
現在はドラムアドバイザーとして、ドラマーへの機材提案やサポートをはじめ、楽器メーカーや音楽関連企業へのアドバイスなど、多方面で活動している。
また、レジェンド・ドラマー Cozy Powell のプレイスタイルやスピリットを深く敬愛し、その魅力を次世代へ伝える“伝承者”としても活動。Cozy Powellサウンドの研究・継承にも力を注いでいる。
📰関連記事


