【UFiP Cymbals】Furio Chirico(フリオ・キリコ)/ ARTI&MESTIERI, Furio Chirico’s THE TRIP インタビュー
来日公演を行った ARTI & MESTIERI、そして Furio Chirico’s THE TRIP。イタリアン・プログレッシブ・ロックを代表するドラマー Furio Chirico(フリオ・キリコ)に、現在の活動、愛用する UFiP Cymbals の魅力、そして自身の演奏スタイルについて話を聞きました。
長年にわたり唯一無二のプレイを追求してきた彼のサウンドは、いまなお多くのドラマーやリスナーを魅了し続けています。今回のインタビューでは、シンバル選びに対する考え方から、現在のセットアップ、そしてライブに懸ける想いまで、幅広く語ってもらいました。

本日は、Furio Chirico’s THE TRIP と、ARTI&MESTIERI日本最終公演との2本の長いステージになりますね。ARTI&MESTIERIとしては、いよいよこれが最後のステージとなります。ステージに対する想いを教えていただけますか?
2つのバンドで2日間のコンサートは、いずれも長時間に及ぶハードな内容であり、相応の入念な準備が必要でした。 これほど長いプログラムをこなすためには、何よりもスタミナが不可欠です。体力面でのトレーニングによる身体作りはもとより、音楽的な演奏面での練習も大変でしたが、本番に向けて持てるすべてを発揮できる準備を整えることができたと思っています。
あなたのドラムサウンドといえば、UFiP(ユーヒップ)シンバルの存在が欠かせないと感じますが、使い始めたきっかけは何ですか?
主要なシンバルブランドは、それぞれが優れた音の特性を持っていると認識しています。その中で私がUFiPを使い始めたきっかけは、とても感情的な「思い」があります。最大の理由は、創業者であるルイジ・トロンチ氏との間に育まれた深い友情です。また、UFiPは卓越した専門知識と情熱を持つ技術・運営スタッフに恵まれており、非常に緊密な協力体制を築くことができます。これこそが、我々イタリア人が大切にする『ファミリー』のようなメーカーのあり方だと感じています。私が今日に至るまでUFiPを使用し続けている理由は他にもいくつかありますが、その理由の一つは、職人の高度な手作業による『鋳造』プロセスです。一枚一枚のシンバルが独自の特性と音色を備えており、他のメーカーには真似できない唯一無二の個性を生み出していると感じています。 また、UFiPはイタリアのメーカーとして、自国の伝統と技術を世界に向けて発信しています。そのシンバルを叩けることはイタリア人ドラマーである私にとって誇りであり、光栄なことです。

Bionic(バイオニック)シリーズといえばロック系に最適なシンバルの印象が強いのですが、敢えてBionicシリーズを愛用している理由は何ですか?
UFiPの中で特に素晴らしいと感じているシリーズは、一つはBionicシリーズ、もう一つはClassシリーズの2つです。 中でもBionicを愛用している理由は、何より私自身のドラミングスタイルに合致しているからです。パワフルで極めて鮮明、かつクリアでありながら、音の深みと優れたダイナミクスを兼ね備えています。ロックに最適でありながら、こちらのタッチ次第でドライで短い音色も表現できるため、モダン・ジャズなどの繊細なジャンルにも絶妙にマッチします。ひとつのジャンルだけでない音楽を演奏する私にとって、これは大切なことで、Bionicはこちらの演奏方法次第でどんなジャンルにも適合する「万能なシンバル」だと思います。私の演奏する音楽にマッチしているということです。

オープンハンド奏法はいつから始めたのですか?始めたきっかけを教えてください。
私は生まれつき左利きですが、通常の左利きドラマーのセットアップのようにバスドラムを右にフロアタムを左にセッティングし、スネアドラムとハイハットのために手を左右に交差させるというのではなく、本能的に右足でバスドラムを踏み始めたためキットを左利き用に変更せず、当たり前の様にオープンハンド奏法を習得しました。
これは50年以上前のことですが、当たり前のようにオープンハンド奏法になっていたことで、左側に12”タムと16”フロアを順番に並べた一つのセット、右側には14”タムと18”フロアを順番に並べたもう一つのセットを設置し、中央手前に、右手レギュラーグリップでプレイしやすいよう左に傾けたスネアドラム、その上に10インチ・タムをセットアップしたセッティングで実験を始めました。以来、これを『スペクラーレ(イタリア語で「鏡像」)』と命名し、自分のシンボル・セットアップとして確立させました。

マイク・マンジーニ氏も似たようなセットアップですが、彼が始めたのは1990年代ということに対し、私は1970年代後半からこのスタイルを追求しており、セッティング内容も若干異なります。マイク・マンジーニ氏は、ドラマー側から見て、中央のタムを起点として、左右対称にどちらも同じサイズのタムとフロアが並んでいます。しかし、私のシステムでは、中央の10”タムを起点として、左側は12”タムと16”フロア、右側は14”タムと18”フロアという順番に並ベているので、音階的には完全に左右対称にはならず、「スネア→10”タム→12”タム→16”フロア」の左側の音階、「スネア→10”タム→14”タム→18”フロア」の右側の音階、さらに「(中央前)スネア→(中央奥)10”タム→(左)12”タム→(右)14”タム→(左)16”フロア→(右)18”フロア」という6つの音が交互に並ぶ音階、という3つの音階が作られています。結果として、左側から出す音階は右側から出す音階とは異なるので、スペクラーレに見えるセットアップですが、音の観点ではスペクラーレ(左右対称)ではないのです。

トラディショナルグリップの持ち手が反対ですがその理由はなんですか?
グリップが左右逆であるという点は、左利きである私特有のスタイルと言えるでしょう。ドラムを始めた当初から、私はクラシック(レギュラー)・グリップのフィールを非常に気に入り、右手のクラシック・グリップによるオープンハンド奏法でいこうと決めていました。オープンハンド奏法で右手でマッチド・グリップをしようとしたら、自然に苦労なくクラシック・グリップになっていたというわけです。
今回の公演では『THE TRIP』でロックな楽曲を、『ARTI&MESTIERI』でジャズ・ロック的な楽曲を演奏するため、楽曲に合わせてマッチド・グリップも併用し使い分けをしています。しかし、私にとって最も快適で自分らしいスタイルは、やはり右手でのクラシック・グリップです。ライドを左手で、タムを右手でフロアも絡めてオープンハンド奏法で交差せず叩くときに、タムやフロア同様にハイハットへも自由に右手を伸ばしてプレイすることができ、より打力をコントロールしながら自由自在に叩くことができます。つまり、交差しないことにより、オープン・ハンドだからこそ、より高い角度からより力強く叩けることができるというわけです。持ち手が逆のクラシック・グリップは、私のオープン・ハンド奏法を生かすためのグリップなのです。

ARTI&MESTIERIとしての来日は今回が最後となりますが、このバンドの歴史を共に歩んできた日本のファン、そしてあなたの音の愛好家の方々に向けたメッセージをお願いします。
ARTI&MESTIERIは音楽的な歴史も長く、関わってきた多くのコラボレーターを含めると、一つの『企業』あるいは『学校』のように大きいです。 現在もオリジナルメンバーを中心に活動を続けていますが、今回の日本公演では一部の、例えばジジ・ヴェネゴーニといったオリジナルメンバーに健康的問題があり、地元イタリア国内での公演は数回程度であれば参加できる状態ですが、イタリアから遠く離れた国々での公演は今後行えなくなってしまいました。
アルバムや楽曲の制作には今後もオリジナルメンバーは参加しますが、これからのライブ活動は、事実上可能なことと難しいことが出てきています。一方で、今回の来日編成メンバーの中ではベテランだけれど年齢的には若手であるヴァイオリンのラウタロ・アコスタや、最近加わった新ギタリストとのコラボレーションとともに、今まさにARTI&MESTIERIは新たな時代を切り開こうとしています。 それがどういう形になるのか、この最後と謳った公演で、日本の皆様にバンドのこれからをお見せすることができるのでは、と思っています。
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